Little AngelPretty devil 
      〜ルイヒル年の差パラレル

    “冬のお供”
 



先の季節があまり秋らしくないというか、
中休みを置いてはすぐにも夏の名残りみたいに暑い日が続いた秋だったせいか、
気温自体は特に今時分には珍しくもないそれらしいというに、

「なんかいきなり冬が来たって感じだよね。」

寒くなるのは困ったねぇと言いたいらしいのに、
やわらかそうな頬を真っ赤にした小さなお友達は、微妙にはしゃいでもいるようで。
裏起毛タイプのパーカージャケットと、
赤いタータンチェックのネルのシャツ。
生地はまだ微妙に薄いらしいがそれでもコーデュロイっぽいボトムを合わせた、
見るからに暖かそうな冬の装いをまとった小早川さんチの瀬那くん。
なのに、そんな重ね着が嬉しいか、
それともゴミ出しのお手伝いをした早朝は吐息が白かったのが面白かったか、
寒くなったという事態、ちょっと嬉しそうに語ってくれて。

「アメフトの試合も本番だかんな、なんかワキワキするのは判っけどよ。」

こちらさんも、フェイクファーの裏地付き暖かそうなパーカーベストに、
英語のロゴがイタリックで描かれた小粋なトレーナー、
ズボンは一丁前にも大人が着そうなカーゴパンツ風で。
靴もどこかいかつい登山靴っぽい型のという、
なかなかに凝ったコーディネートで揃えた蛭魔さんチの妖一くんが、

「寒いと体も動かしにくいし、あんま良いことねぇじゃねぇかよ。」

煙たいなぁとまでは言わないが、
何が楽しいのかちょっと判らんと言いたげに、細い眉をひそめて応じる。
何せ彼らの仲良しなお兄さんたちは、バリバリのアメフトボウラー。
今からが本番の真剣勝負に、気合も高まる頃合いで。
ハロウィンだクリスマスだと、
一般人のように浮かれてもおれぬとでも言いたいのかな…と思いきや、
寒いのが敵わぬなんて、ただの愚痴みたいな言いようをするお友達なのへ、

 “寒いの、苦手だっけ? ヒル魔くん。”

なにへ対してでも不平をこぼすへそ曲がりなのはいつものことだが、
今日の言いようはちょっとそんな反抗の気色からではなかったような感触がして。

「え〜? でも、寒くなったら美味しいってゆーおやつが増えるでしょう?」

暑い時はちょっとなぁってだった、チョコとかココアとか、
ワッフルもたい焼きやお芋も美味しいしvvと、
そりゃあ嬉しそうに言い足すので、

「…その上、暖房利いたとこではアイスも食うもんな、お前。」
「うんっ!」

これで結構駆け回るものか、いやいや成長期のお子様だからか、
その新陳代謝は恐ろしいらしく。
甘いの大好きな別腹体質だというに、
そういやこのセナくんはあんまり太ってはないから羨まし…じゃあなくて。(苦笑)

「俺はあんまり冬場はなぁ。」
「え?」

あれれェと、ここでやっとセナくんが小首を傾げる。だって、

「ヒル魔くんて暑いより寒いの方が強かったのに?」
「…まぁな。」

言い方が妙だったが、つまりは“暑さは迷惑、寒い方が我慢が利く”という
そういうところも大人っぽい主張をいつも口にしていて、
態度でも示していたのにと。
さすがは仲良しで把握していたらしいセナくんで。
図星だったか、肉薄な口許をキュウとすぼめた金髪の坊や、
昼休みを過ごしている校庭の一角の陽だまりの中、
凭れていた渡り廊下の柱に背中を押しつけると、

「寒くなると勢いづいたように甘いものばっかになるだろが。」

暑い時はうんざりしたバーガーやホットドッグが食べやすくなるが、
それだとて寒空の下で広げればすぐに冷めてしまうから。
じゃあ飲み物で補う…にしても。

「気の利いたものといや、生姜湯くらいしかねぇし。」

あ〜あと、いかにもつまんねぇなと言いたげな声を出す。
たい焼きに代表されるお菓子にしても、ココアやミルクティーといった飲み物にしても、
それが身体を温める、いわゆる燃焼効率を考えたものであれ、
甘いというのを前面に押し出すものがそういや多いと嘆いている坊やなようで。

「そっかぁ…。」

む〜んと困ったねぇというお顔になったセナくん、
少ししてアッと何か思いついたらしく、

「レモネードは? あ、カルピスもお湯で作ると温かくなって美味しいよ?」
「そういうのって甘くねぇのか?」
「カルピスはビミョーだけども、
 セナはレモネードだとお砂糖とかシロップ入れるし。
 入れなかったらヒル魔くんのお好みな味になるかもだよ?」

酸っぱいのはダメ?と、小首を傾げる様子は真顔のそれで、
本当に真剣真面目に考え、案じてくれてのものらしく。

 “…だよなぁ。”

え〜何で甘いのはダメなの?と、
信じられないなんて憤慨しかねぬ持って来ようなのに。
温かい飲み物が限られるのは大変だねと、
ちゃんと向き合ってくれる優しいところが、

 “寸借詐欺とかに簡単に騙されそうではあるがな。”

こらこら、小悪魔くん。(苦笑)
素直に“良い奴だなぁ”と感じ入らず、
もうひと声、しかも斜めに外すのは、
もはや仕様かそれとも照れ隠しの結果というやつか。

「大人だったら、温かいお酒とかってなるんだろけどね。」
「おいおい、酔っ払っちまうだろが。」

ほら、こんな風に油断も隙もない脱線をする奴だから、
付き合いよく何にでも“そうかそうか”じゃいられねくてよと。
しょっぱそうな、それでいてちょっと甘い笑い方をして、
まったくよーと呆れたよな声を出した妖一くんだったのでありました。




     〜Fine〜  16.11.12


 *しょうがブレンドのカップケーキやワッフル、ディップなど
  辛口向きのスィーツもないではないのでしょうが、
  店屋で求めるとなると限られたところでしか扱ってないのでしょうしね。

  「酒のあてみたいなものとも違うんだろうしねぇ」
  「キュウゾウはフグの干物とか好きですが」

  こらこら、どこのイケない大人ですか、
  幼子に妙なもの仕込んだのは。(苦笑)

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